住宅取得資金贈与とは?非課税制度の要件・限度額・手続きから失敗しない活用法まで

2026.2.26.

  • 注文住宅
「マイホームを買いたいけれど、親に援助を頼んだら贈与税が心配......」そんな悩みをお持ちではありませんか?

実は、住宅を手に入れるための資金を親や祖父母から受け取る場合には、所定の条件をクリアすることで最大1,000万円まで贈与税が免除される優遇制度が用意されています。ただし、適用の条件を一つでも見落とすと、数百万円もの税金が発生しかねない"両刃の剣"でもあります。

この記事では、2026年時点の最新ルールをふまえ、「非課税の上限はいくら?」「手続きで失敗しないためには?」「見落としやすい落とし穴は?」といった疑問に、順を追ってお答えしていきます。これからマイホームの取得を考えている方、ご家族からの援助を検討されている方にとって、判断材料となる情報を詰め込みました。

なお、本記事は2026年2月時点で施行されている税法にもとづいて執筆しています。税制は年度ごとに改正されることがあるため、具体的な手続きの前には税理士や管轄の税務署への確認をおすすめします。

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制度の細部に入る前に、まずは全体の「答え」を先に確認しましょう。

住宅の種類 非課税限度額 基礎控除との合計
省エネ等住宅 1,000万円 最大1,110万円
一般住宅(上記以外) 500万円 最大610万円
※国税庁 No.4508「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」の情報をもとに筆者作成

押さえるべきポイントは3つだけです。①住宅の省エネ性能で非課税枠に500万円の差が出る ②税額がゼロでも贈与税の申告は必須(詳細はH2-6で後述) ③直系尊属(父母・祖父母)からの贈与に限定される。各ポイントの詳細は、次章以降で順を追って解説します。

「名前だけは知っているけれど、中身はよくわからない」という方は少なくありません。ここでは制度のアウトラインを整理し、適用期限や省エネ等住宅の判定基準まで全体をひと通り見渡せるようにします。

端的に言えば、「父母や祖父母がマイホーム資金を出してくれても、決められた額の範囲内なら贈与税を払わなくてよい仕組み」です。
法律上の正式名称は「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置(措置法70条の2)」といいます。マイホームの価格上昇が社会的な課題となるなか、若い世代の住宅取得を後押しする目的で国が時限的に設けた優遇策です。令和6年度の税制改正で3年間の延長が決まり、2026年(令和8年)12月31日が現時点での期限となっています。
通常なら年間110万円を超える財産の移転には贈与税がかかりますが、住宅の購入資金に使途を限定することで、省エネ等住宅なら1,000万円、一般住宅なら500万円という大きな非課税枠が適用されます。
期限の延長は毎年12月に発表される税制改正大綱の内容次第です。「どうせ来年も続くだろう」という楽観は禁物で、仮に廃止や縮小となれば恩恵を受けるチャンスそのものが消滅します。利用を考えているなら、期限に余裕のあるうちに動き出すのが得策です。

項目 内容
制度の正式名称 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税
適用期間 2024年(令和6年)1月1日~2026年(令和8年)12月31日
贈与する人 直系尊属(父母・祖父母など)
贈与を受ける人 18歳以上の子・孫(贈与年1/1時点)
対象となる資金 住宅の新築・取得・増改築等のための金銭(家具・引越し費用は含まない)
※国税庁 No.4508および国土交通省「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」の情報をもとに筆者作成

H2-1で示した「500万円の差」を決定づけるのが、住宅の環境性能です。省エネ等住宅として認定されるためには、以下に示すいずれかのカテゴリーでクリアラインに到達しなければなりません。なお、新築か中古かによって求められる水準が異なる点にはご注意ください。

令和6年度の税制改正に伴い、新築住宅に求められる省エネ水準が従来より引き上げられました。現行で適用される判定基準は次のとおりです。

基準区分 基準内容
省エネ性能 断熱等性能等級5以上 かつ 一次エネルギー消費量等級6以上(ZEH水準)
耐震性能 耐震等級2以上 または 免震建築物
バリアフリー 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上

中古物件やリフォームに関しては、新築ほど高い水準は要求されません。具体的な基準は以下のとおりです。

基準区分 基準内容
省エネ性能 断熱等性能等級4以上 又は 一次エネルギー消費量等級4以上
耐震性能 耐震等級2以上 または 免震建築物
バリアフリー 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上

補足として、断熱等性能等級を評価する際、「結露防止に関する基準」は対象外とされています。また移行期の経過措置があり、令和5年12月31日以前に建築確認を取得した住宅、または令和6年6月30日以前に竣工した住宅については、旧基準(断熱等性能等級4以上など)を満たしていれば省エネ等住宅と認められます。
2025年4月以降は建築確認の段階で省エネ基準への適合が義務化されました。ただし、義務化で求められる最低ラインと、1,000万円枠に必要な「省エネ等住宅」の基準(等級5/6等)は同一ではありません。義務化により省エネ性能を意識した設計が標準化しつつあるため、結果として1,000万円枠を満たしやすくはなっていますが、自動的に該当するわけではない点にご注意ください。確実を期すなら、建築会社やハウスメーカーに「うちの住宅は省エネ等住宅の認定を受けられますか?」と早い段階で確認するのがベストです。性能証明書の発行には設計時点からの段取りが必要になるため、検討初期にアクションを起こしてください。

「結局、自分はこの制度を利用できるのだろうか」――多くの方が抱える疑問です。適用要件は大きく「人に関する条件」と「住宅に関する条件」に分かれますので、下の一覧で当てはまるかどうかをチェックしてみてください。

区分 要件項目 内容
贈与する側 続柄 直系尊属(父母・祖父母・曽祖父母)であること
贈与を受ける側 年齢 贈与年の1月1日時点で18歳以上
所得 贈与年の合計所得金額2,000万円以下(40㎡以上50㎡未満の住宅は1,000万円以下)
居住地 贈与時に日本国内に住所があること
利用回数 原則1回(過去にこの特例の適用を受けていないこと。一定の場合を除く)
居住 翌年3月15日までに住宅に居住(遅くとも翌年12月31日まで)
住宅の要件 共通 床面積40㎡以上240㎡以下、1/2以上が居住用
中古住宅 1982年1月1日以後に建築、又は耐震基準適合証明書等あり
増改築 自己所有・居住の家屋への工事。工事費100万円以上、半分以上が居住部分
※国税庁 No.4508の情報をもとに筆者作成

「直系尊属」という言葉は日常的に使う表現ではないため、戸惑う方も多いでしょう。これは自分の血筋を上にたどったときに位置する親族、つまり父母・祖父母・曽祖父母を指す法律用語です。
ここで見落としがちなのが、配偶者の親(いわゆる義理の父母)はこのカテゴリーに含まれないという点です。つまり夫側から見て「妻のお父さん」は直系尊属に当たらないため、妻の父が夫に直接資金を渡しても特例の対象にはなりません。この場合、妻本人が妻の父から受け取る形に整えれば制度を活用できます。どうしても義父母から直接贈与したいのであれば、養子縁組によって法的な親子関係をつくるという方法もあります。

資金を受け取る側に求められる主な条件を確認しましょう。
年齢の条件:贈与が行われた年の1月1日の段階で満18歳に達していること。2022年の民法改正で成人年齢が18歳に引き下げられた流れを受け、この制度でもそれまでの20歳基準から切り替わっています。
所得の条件:資金を受け取る年の合計所得が2,000万円を超えないこと。なお、取得先の住宅が床面積40㎡以上50㎡未満の場合は、ボーダーが1,000万円まで下がります。見落としやすいのは、不動産や株式を売って得た譲渡益もこの所得に含まれる点です。大きな売却益が見込まれる年には、贈与のタイミングを翌年にシフトすることも視野に入れましょう。
居住の条件:贈与を受けた時点で日本国内に住所を有していることが前提です。加えて、過去にこの非課税特例(平成21年分~令和5年分の旧制度)を利用していないことも原則として求められます(例外あり)。

人の条件だけでなく、購入・取得する住宅自体にもクリアすべき基準があります。中古物件やリノベーションでは盲点になりやすい項目が多いため、入念にチェックしてください。
【すべてに共通する基準】登記簿ベースの床面積が40㎡以上240㎡以下であること(マンション等の区分所有は専有面積で判定)。かつ、延床面積の半分以上が自身の居住スペースであることが条件です。
【要注意】マンションの床面積は「内法面積」で判定されます。広告やパンフレットに掲載される「壁芯面積」より数㎡小さくなるのが通常です。とくに専有面積が40㎡〜45㎡前後のコンパクト物件では、壁芯では要件を満たしていても登記簿面積では足りないケースがあるため、契約前に必ず登記簿面積で確認してください。
【中古住宅に求められる追加基準】昭和57年(1982年)1月1日以降に建築されたものであること。それより古い建物の場合は、耐震基準適合証明書・建設住宅性能評価書(耐震等級1以上)・既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書のうち、いずれかの書類を用意する必要があります。
【増改築に求められる追加基準】自分自身が所有し、なおかつ現在住んでいる家屋への工事であること。総工事費が100万円を上回り、その工事の過半が居住部分に関わるものであることが条件です。

「自分に当てはめると、税額はどうなるのか」は最も気になるところでしょう。典型的な2パターンで、実際の計算過程をたどってみます。

贈与額 非課税枠 贈与税
1,000万円 1,000万円 0円

結果は贈与税ゼロ。ただし、税額がゼロでも贈与税の申告は必須です。申告を怠った場合のリスクについてはH2-6「【最重要】贈与税ゼロでも申告は絶対必要」で詳しく解説しています。

非課税のラインを超える金額を贈与されたケースも見ておきましょう。計算は5つのステップで進めます。

Step 計算項目 金額・内容
1 贈与額 1,500万円
2 非課税枠を差し引く 1,500万円 − 1,000万円(省エネ等住宅)= 500万円
3 基礎控除を差し引く 500万円 − 110万円 = 390万円(課税価格)
4 税率・控除額を適用 390万円 × 15%(特例税率)− 10万円(控除額)
5 贈与税額 48万5,000円

父母や祖父母から18歳以上の子・孫が財産を受け取った場合には、通常の税率よりも負担が軽い「特例税率」が使われます。このケースでは課税ベースが390万円なので税率15%・控除10万円が適用され、最終的な納税額は48万5,000円となりました。
もし超過分がもっと膨らむようであれば、次の章で紹介する相続時精算課税制度との組み合わせによって、贈与時の税負担を圧縮できる余地があります。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超 400万円以下 15% 10万円
400万円超 600万円以下 20% 30万円
600万円超 1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円超 1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円超 3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円超 4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円
※国税庁 No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」の情報をもとに筆者作成

住宅取得資金の非課税枠を単体で使うだけでは、節税の可能性を十分に引き出せないことがあります。ほかの制度を組み合わせることで、さらに大きな効果を狙えるケースを見ていきましょう。

「1,000万円の枠だけでは資金が足りない」という場合にぜひ視野に入れたいのが、相続時精算課税制度とのセット活用です。

非課税枠の種類 金額 性質
①住宅取得資金の非課税枠 1,000万円 完全に非課税
②相続時精算課税の特別控除 2,500万円 課税の先送り
③相続時精算課税の基礎控除 110万円 完全に非課税
合計(贈与時に非課税となる金額) 3,610万円

ただし、2つのリスクを理解したうえで判断する必要があります。
リスク①:相続時精算課税をいったん選ぶと、その贈与者との間で暦年課税に切り替え直すことができません。以後の贈与はすべて精算課税のルールに従うことになります。
リスク②:特別控除2,500万円で非課税となった部分は、贈与者が亡くなった時点で相続財産に上乗せされます。つまり「贈与税がタダになった」のではなく「相続時まで支払いを繰り延べた」にすぎません。真の意味で課税なしとなるのは、住宅取得資金の枠(1,000万円)と精算課税の基礎控除(110万円)の部分だけです。

住宅ローン減税とこの非課税特例は同時に利用できますが、意外な盲点があります。ローン控除額を算定するベースとなる「住宅の取得対価」から、非課税で受け取った贈与額が差し引かれるのです。

物件価格 非課税贈与額 ローン控除対象額
3,000万円 − 1,000万円 = 2,000万円

要するに、親からの援助額を増やすほどローン減税の恩恵が目減りするというトレードオフが発生します。「頭金をどこまで贈与でまかなうか」と「ローン控除でどれだけ取り戻せるか」を天秤にかけ、トータルの手残りが最大になるプランを事前にシミュレーションしておきましょう。

夫と妻がそれぞれ自分の実親から援助を受ける形にすれば、非課税枠は人ごとに適用されます。省エネ等住宅であれば、夫婦合算で2,000万円を税負担ゼロで手にできる計算です。
具体的には「夫の親→夫名義の口座へ1,000万円」「妻の親→妻名義の口座へ1,000万円」という資金の流れをつくります。ただし、夫が妻の親から受け取る(その逆も同様)パターンは対象外です。お金の出し手と受け手の親族関係、そして住宅の持分登記をきちんと対応させることがカギになります。

「仕組みは理解できた。では実際のアクションは?」――ここからは実務面をコンパクトにまとめます。

Step 時期 やること
1 贈与実行 親から銀行振込で資金を受け取る。贈与契約書を作成
2 住宅契約 売買契約または建築請負契約を締結
3 住宅取得 物件の引渡し・登記を完了
4 入居 贈与翌年3月15日までに居住開始(遅くとも翌年12月31日まで)
5 贈与税の申告 翌年2月1日~3月15日に贈与税の申告書を提出(税額ゼロでも必須)

大まかな流れは「お金を受け取る → 家を手に入れる → 引っ越して住む → 税務署に届け出る」という4段構成です。注文住宅を建てるケースでは、工事が予定どおりに進まないリスクを常に念頭に置き、スケジュールにゆとりを持たせることが欠かせません。

大原則として、もらった資金は住宅購入の「頭金」に充てるものと位置づけられています。先にローンを組んで家を買い、あとから親のお金で繰り上げ返済に回す――このパターンは制度の対象外です。
ローンの残債がある状態で「返済資金として親から援助を受けたい」という相談は多いのですが、この特例が適用されるのはあくまで「これから住宅を取得する」ための資金に限定されています。お金を受け取るタイミングは、住宅の売買契約や工事請負契約の決済よりも前でなければなりません。

引っ越しの期限には「第一段階」と「第二段階」の二層構造があります。
【第一段階】原則として、贈与を受けた年の翌年3月15日までに新居での生活をスタートさせること。
【第二段階】3月15日の時点で入居が間に合っていなくても、「近いうちに確実に住み始める見込みがある」と認められれば猶予されるケースがあります。ただし、翌年12月31日を過ぎてもなお居住していない場合は特例の適用が取り消され、修正申告の手続きが発生します。
注文住宅で3月15日までに完成が間に合わなくても、その時点で屋根や骨組みが完成し、土地に固定された建物と認められる段階であれば「新築済み」として扱われます。

年末の12月に資金を受け取ってしまうと、翌年3月15日までわずか3か月程度しか時間が残らず、フルオーダーの注文住宅を完成させるのはほぼ不可能です。
ところが、贈与の日付を翌年の1月に1か月だけずらすと、入居のデッドラインは「その翌年の3月15日」へと移動し、使える猶予が約14か月に伸びます。カレンダー上のたった1か月が、制度の成否を分ける分水嶺になり得るのです。

贈与時期 居住期限(原則) 猶予期間
2026年12月 2027年3月15日 約3ヶ月(危険)
2027年1月 2028年3月15日 約14ヶ月(余裕あり)

お金を手渡しで受け取るのは避け、かならず銀行振込で記録を残すようにしてください。現金でのやりとりでは「誰から・いつ・いくら」という事実が証明しにくく、あとから税務署に説明を求められた際に窮地に立たされるおそれがあります。
振込時には、送金元が贈与者の名義口座、送金先が受贈者の名義口座であることをダブルチェックしましょう。通帳に刻まれた振込履歴と贈与契約書をワンセットで保管しておけば、将来的にもっとも信頼度の高い証拠書類となります。

区分 必要書類
全種別共通 贈与税の申告書、戸籍謄本、住民票の写し、売買契約書(請負契約書)の写し、登記事項証明書
省エネ等住宅 住宅性能証明書、建設住宅性能評価書、長期優良住宅認定通知書等のいずれか
中古住宅 耐震基準適合証明書(1982年以前の建築の場合)
増改築 増改築等工事証明書

申告はe-Tax(国税電子申告システム)でもオンライン提出が可能です。マイナンバーカードとICカードリーダー(またはスマートフォン)があれば、税務署への来所を省略できます。

この記事を通じてもっとも伝えたいのがこの点です。非課税特例は、「贈与税の申告を行って初めて効力を発揮する」タイプの制度です。納めるべき税金がゼロであっても、翌年2月1日から3月15日の申告期間中に届け出を完了させなければ、特例は一切適用されません。
届け出を怠ったときに降りかかるペナルティを整理すると、次のようになります。

ペナルティの種類 内容
贈与税の課税 受け取った全額が課税対象に(非課税枠が一切適用されない)
無申告加算税 原則15%(50万円超部分20%、300万円超部分30%)。直近5年以内の再犯には10%上乗せ
延滞税 納期限から2か月以内:年2.8%、2か月超過後:年9.1%(2026年〈令和8年〉の割合。特例基準割合による軽減後)
重加算税(悪質なケース) 過少申告の場合35%、無申告の場合40%

「納税額がないのだから届け出も要らない」という思い込みが原因で、何百万円もの追徴を受けたケースは実務上珍しくありません。このポイントだけは、どうか記憶にとどめておいてください。

「贈与税がかからないのだからトクに決まっている」――その直感は必ずしも正しくありません。目の前の税負担がゼロでも、長期的に見ると相続税が膨らむシナリオがあるのです。

自分名義のマイホームを持つと「持ち家がある人」に分類されるため、将来親が亡くなった際に「家なき子特例」を使える資格を失うおそれがあります。
家なき子特例とは、亡くなった方の自宅敷地を、持ち家のない相続人が引き継ぐ際に土地の評価額を80%カットできる仕組みです。ただし、この特例には「相続開始前3年以内に自己所有の家屋に居住していないこと」など6つの細かい要件があり、平成30年の改正で大幅に厳格化されています。該当の可否は個別事情に左右されるため、必ず税理士に確認してください。

住宅取得資金贈与の非課税メリット 家なき子特例喪失のデメリット
贈与税の節約:おおむね200万円規模 将来の相続税増加:数百万~数千万円に達するケースも

実家の所在地が地価の高いエリアにある場合は、「いま数百万円を浮かせる代わりに、将来数千万円の節税チャンスを手放す」という逆転が起こりかねません。贈与以外の資金サポート手段も含めて、総合的にシミュレーションしてから判断しましょう。

資金援助方法 メリット デメリット 家なき子特例への影響
贈与 最大1,000万円が非課税 家なき子特例を失うリスク 影響あり(持ち家になる)
親子間融資 贈与税がかからない 返済義務あり。契約書・返済実績が必要 影響あり(持ち家になる)
親名義で購入し同居 家なき子特例を維持できる 親の資産管理が必要 影響なし

贈与された資金で土地だけを先に買う場合は、その土地の上に住宅を建てる計画と紐づいていることが条件です。新築に先立って敷地を押さえるケースは認められますが、住宅の取得・新築との関連が認められない「土地だけの購入」は適用の範囲外となります。

「金額が小さいから届け出は不要だろう」と考えるのは極めて危ういです。課税当局が贈与の事実をキャッチする代表的な経路は3つあります。
経路①:不動産を取得した後に届く「お尋ね」文書。自己資金とローンの合計額が物件の購入額に満たない場合、差額の原資について説明を求められます。
経路②:住宅ローン減税の確定申告書。申告内容と購入資金の出どころが整合しなければ、税務調査の端緒になります。
経路③:贈与者の相続が発生した際の預金調査。被相続人の過去5年~10年分の口座入出金が精査され、未申告の資金移動が発覚するケースは非常に多い状況です。

ここまで読んで「この制度を活用しよう」と決心した方へ、親御さんへの切り出し方と実務準備のコツをお伝えします。

ご家族へのお願いは、感情に訴えるよりも筋道を立てた説明の方が響きます。次の3つの角度から話を組み立ててみてください。
①「今だけのチャンス」という切り口:「この非課税枠は2026年末までの時限措置で、今後も続く保証はありません。使えるうちに動くのが賢明です。」
②「親自身の節税にもなる」という切り口:「生きているうちに財産を移しておけば、将来の相続税の課税対象額を減らす効果が見込めます。」
③「家族の安心に直結する」という切り口:「近くに住めば顔を見せる機会も増えますし、いざというときにすぐ駆けつけられる距離感を保てます。」
お子さんの通学環境や、祖父母世代が孫と気軽に交流できる距離感など、家族全体の暮らしの質が向上する点を具体的に示すと、スムーズに話が進みやすくなります。

親子の間柄であっても、書面を残しておくことは鉄則です。税務署から説明を求められたときの備えになるだけでなく、きょうだい間での認識ずれを防ぐ役割も果たします。契約書に盛り込むべき情報は次の5つです。

No. 記載項目 記載例・ポイント
1 贈与者の情報 氏名・住所・生年月日
2 受贈者の情報 氏名・住所・生年月日
3 贈与財産の内容 金額を明記(例:金1,000万円)
4 贈与の目的・条件 「住宅取得資金として贈与する」旨を明記
5 贈与の方法・日付 振込先口座・振込日を明記。贈与者・受贈者双方の署名押印

書類は同じ内容のものを2部つくり、双方が1部ずつ手元に保管するのが原則です。さらに万全を期すなら、公証役場で確定日付の認証を受けておくと、書面の証拠価値が格段に高まります。
なお、金銭の贈与契約書には原則として収入印紙の貼付は不要です(印紙税法上の課税文書に該当しないため)。不動産の贈与契約書とは扱いが異なるので混同にご注意ください。

特に多く寄せられる質問を3つ厳選し、これまでの内容を補足する形でお答えします。

いいえ、非課税枠は受贈者1人あたりの上限です。父から500万円、母から500万円を受け取った場合でも、合計1,000万円が非課税の上限となります。非課税枠は「贈与者ごと」ではなく「受贈者ごと」に設定されている点にご注意ください。ただし、夫婦がそれぞれ自分の親から受け取る場合は、夫に1,000万円・妻に1,000万円の枠が別々に適用されます(詳しくは「夫婦それぞれが非課税枠を使う方法」を参照)。

居住部分が延床面積の1/2以上であれば対象です。ただし非課税枠が適用されるのは、住宅の取得対価のうち居住用部分に対応する金額のみです。たとえば1階が店舗・2階が住居の建物で、居住面積割合が60%の場合、贈与資金のうち居住用部分に充当される金額だけが非課税の計算対象となります。

非課税枠の範囲内であれば、加算対象にはなりません。通常の暦年贈与では、贈与者が亡くなる前7年以内の贈与分が相続財産に加算されますが、この特例の枠内で処理された金額については加算を免れます。これは制度の大きな利点の一つです。ただし、非課税ラインを超えて贈与した部分については、一般ルールどおり加算対象となる点にご注意ください。

最後に、記事のポイントを一覧にまとめます。

ポイント 内容
非課税限度額 省エネ等住宅1,000万円、一般住宅500万円(+基礎控除110万円)
適用期限 2026年(令和8年)12月31日まで
最大の注意点 税額ゼロでも贈与税の申告は絶対に必要(→参照
タイミング 贈与は住宅取得「前」に。12月より1月の贈与が安全
落とし穴 小規模宅地等の特例喪失リスクも必ず検討(→参照

※本記事の情報は2026年2月時点の税法にもとづいています。実際の手続きの前には、税理士や所轄の税務署に最新の取扱いをご確認ください。

SUPERVISOR

監修者

ポラテックグループ
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