注文住宅でつなぎ融資は不要?分割融資の仕組みや選び方を解説

2025.5.27.
- 注文住宅
この記事では、つなぎ融資の仕組みやメリット・デメリットに加え、不要にできる手段として注目される「分割融資」についても解説します。どちらを選ぶべきか迷っている方に向けて、違いや選び方のポイントをわかりやすく紹介しますので、参考にしてください。
注文住宅における「つなぎ融資」とは?
注文住宅を建てる際は、完成前の支払いに備えて資金を準備する必要があります。まずは、そのために利用される「つなぎ融資」について、仕組みや特徴を詳しく見ていきましょう。
注文住宅でつなぎ融資が必要になる理由
注文住宅では、工事請負契約を結んだ後に土地代金や着工金、中間金など、建物完成前にまとまった支払いが発生します。しかし、住宅ローンは原則として建物が完成してから実行されるため、それまでの期間は自己資金で賄わなければなりません。
このような資金の空白期間を埋める手段として活用されるのが「つなぎ融資」です。住宅ローン実行までの間に必要な費用を一時的に借り入れることで、無理のない資金計画を立てられる仕組みとして、多くの住宅購入者が利用しています。
つなぎ融資の仕組み
つなぎ融資は、住宅ローンとは別に契約する短期の融資です。建物完成前に必要な支払いに対応する仕組みとなっています。土地代や着工金などに充てたのち、建物が完成して住宅ローンが実行されるタイミングで、つなぎ融資の全額を一括で返済する流れとなります。
このため、つなぎ融資を利用する場合、ローンは「つなぎ融資+住宅ローン」の二本立てになります。それぞれの融資が役割を分担し、完成までの資金ギャップをスムーズに埋める形です。
つなぎ融資のメリット
注文住宅でつなぎ融資を利用することに、どのようなメリットがあるのかを紹介します。
担保が不要
つなぎ融資は、土地や建物に抵当権を設定せずに借りられる「無担保型」の融資です。将来住宅を建てることを前提に、土地購入の資金も柔軟に調達できます。
これにより、担保設定の手間やコストが発生せず、土地の購入や着工に必要な資金をスムーズに確保できます。とくに早い段階で費用が必要になる注文住宅において、利用しやすい資金調達手段といえるでしょう。
仮の建築プランでも借りられるケースが多い
つなぎ融資は、建物の正式なプランが未確定な段階でも申し込めるのが特徴です。概算の見積書や参考プランがあれば審査を受けられることが多く、早期の土地取得に間に合うことも少なくありません。
そのため、まだ詳細な建築計画が固まっていなくても、良い土地を見つけたタイミングで先に購入できる柔軟性があります。住まいづくりのスタートをスムーズに切る手助けとなるでしょう。
多くの金融機関で取り扱いがある
つなぎ融資は、地方銀行や都市銀行をはじめ、多くの金融機関で取り扱いがあるため、利用先を比較・検討しやすいことも利点です。自分のライフプランや返済条件に合った金融機関を選べる選択肢の広さは、資金計画の安心感につながります。
特定の銀行に限定されにくいため、住宅ローンとの相性や審査条件、金利などをふまえた最適な組み合わせが可能になります。制度の普及率の高さも、利用者には心強いポイントです。
つなぎ融資のデメリット
つなぎ融資は資金繰りに役立つ反面、コストや手続き面での負担が大きいというデメリットもあります。ここでは、注意すべき4つのポイントを確認しておきましょう。
金利が高い
つなぎ融資は無担保ローンであるため、金利は通常の住宅ローンに比べて高く、一般的に年2〜4%程度が相場です。借入期間が短くても、借入額が大きければその分利息負担が重くなりがちです。
そのため、長期の借入には向いておらず、建築期間が延びると予想以上にコストがかかるリスクもあります。とくに資金計画に余裕がない場合は、金利の高さが家計に与える影響を事前に試算しておくことが大切です。
団体信用生命保険(団信)に加入できない
つなぎ融資では、通常の住宅ローンのように団体信用生命保険(団信)に加入できません。団信は、契約者に万一のことがあった際に残債を保障する制度ですが、つなぎ融資の期間中は適用外となります。
そのため、返済中に予期せぬ事態が起きた場合、家族に経済的負担が残るリスクがある点には注意が必要です。保障を重視したい方にとっては、心理的な不安材料となるでしょう。
住宅ローン控除の対象にならない
住宅ローン控除は、住宅ローンの契約・実行後から適用される制度です。つなぎ融資は住宅ローン本体とは別の融資にあたるため、控除の対象になりません。
つまり、建物が完成して住宅ローンが実行されるまでは、節税メリットを享受できないことになります。年末の残高をもとに計算される控除制度の性質上、つなぎ融資を利用する場合は、控除開始時期も遅くなる点を理解しておきましょう。
手続きや登記が住宅ローンと別になり煩雑
つなぎ融資と住宅ローンは、別々の契約となるため、それぞれに必要な手続きや書類が発生します。基本的には登記や保証契約も2回おこなう必要があり、スケジュール管理や費用負担が増える傾向があります。
書類提出のタイミングや契約内容の確認など、事務的な手間も無視できません。忙しい共働き世帯にとっては、こうした煩雑さが心理的な負担につながることもあるようです。
つなぎ融資を不要にする「分割融資」とは?
つなぎ融資は便利な一方で、金利の高さや手続きの煩雑さといったデメリットが気になるという声も少なくありません。こうした課題に対する選択肢として注目されているのが「分割融資」です。
ここからは、分割融資の仕組みや特徴を紹介し、どのようにしてつなぎ融資を不要にできるのかを解説していきます。
分割融資の仕組み
分割融資とは、住宅ローンの一部について、土地代や建築工事の進行にあわせて数回に分けて実行する方式です。
たとえば、まず土地代として一部を先に融資実行し、その後、着工時や上棟時、完成時などの建築段階にあわせて融資を受けます。分割融資を利用すると、つなぎ融資不要でスムーズな資金調達が可能です。
なお、土地代のみを先行して融資するケースは「土地先行融資」と呼ばれることもあるなど、金融機関によって呼び方はさまざまです。
分割融資のメリット
つなぎ融資に代わって分割融資を選ぶことで、資金計画や手続きの面で以下のようなメリットが得られます。
金利が低い
分割融資は、つなぎ融資と異なり、住宅ローンと同じ金利条件が適用されるのが大きな特徴です。つなぎ融資の金利は一般的に年2〜4%と高めですが、分割融資では変動金利であれば年0.3〜0.5%前後と、利息負担を大幅に抑えることができます。
また、実行された分にのみ利息が発生するため、金利が低いだけでなく、無駄な支払いも生じません。家計へのインパクトをできるだけ抑えたい方にとって、コスト面で有利な選択肢といえるでしょう。
契約手続きが原則1回で完結する
分割融資は、土地と建物をまとめて1本の住宅ローン契約で対応できるため、契約や手続きが効率的です。つなぎ融資と異なり、別契約・別登記が不要なケースが一般的で、書類作成や手数料の負担も抑えられます。
手続きの煩雑さを避け、シンプルにしたい方にとっては、実務面でのストレスが少ない方式といえるでしょう。
団信に加入できる
分割融資では、初回の融資実行時点から団体信用生命保険(団信)への加入が可能です。団信は、契約者に万一のことがあった際に残債を保険でカバーしてくれる制度です。
つなぎ融資では適用外となる団信も、分割融資なら初回の融資実行時から適用され、家族に安心を提供できます。とくに小さなお子さまがいる家庭にとっては、大きな安心材料になるでしょう。
条件を満たせば住宅ローン控除の対象になる
分割融資は、初回の融資から住宅ローン控除の対象になります。控除を早く受けられることで税負担が軽くなり、資金計画にゆとりをもたせることが可能です。節税効果を早期に得たい方にとっては、大きな魅力といえるでしょう。
ただし、「契約から2年以内に建物が竣工すること」などの条件を満たす必要があるため、しっかりとしたスケジュール管理が必要です。
分割融資のデメリット
多くのメリットがある分割融資ですが、利用にあたってはいくつかの注意点もあります。ここでは、検討時に理解しておきたい主なデメリットを紹介します。
建築プランの確定が前提となるケースが多い
分割融資を利用するには、建物の詳細なプランがある程度確定していることを条件とするのが一般的です。工事請負契約書や建築確認済証の提出を条件とする金融機関も多く、土地購入時点で建築計画まで固まっていないと、融資の実行が難しくなる可能性があります。
そのため、「まず土地を押さえてからじっくり間取りを検討したい」という方には不向きなケースもあるでしょう。スケジュールと設計進行を並行して進める計画性が求められます。
対応している金融機関が限られている
分割融資を取り扱う金融機関は、一部のメガバンクや地方銀行に限られているのが現状です。ネット銀行や信用金庫などでは未対応のケースが多く、希望する金融機関が対応していない可能性もあります。
金融機関を自由に選びたい方や、ネット銀行を使いたい方にとっては、選択肢が狭まることがデメリットになるでしょう。事前に対応可能な金融機関を調べておくことが重要です。
ローン契約時点で総額を決定する必要がある
分割融資では、契約時に住宅ローンの借入総額を確定させなければなりません。そのため、あとから追加工事やプラン変更が発生した場合、金融機関に再審査を求められることがあります。
柔軟な資金対応が難しくなるため、予算に余裕を持たせた計画が求められます。完成後の仕様変更などを想定している場合には、慎重な資金設計が必要です。
つなぎ融資が不要な分割融資を選ぶべき?
ここまで、つなぎ融資と分割融資のそれぞれの特徴やメリット・デメリットを見てきました。ここからは両者の違いを整理し、自分にどちらが合うかを考えるための視点を紹介します。
つなぎ融資と分割融資の違いをまずはよく理解する
つなぎ融資と分割融資は、どちらも注文住宅を建てる際の資金計画に用いられる手段ですが、仕組みや契約方法、金利、手続きの面などで大きく異なります。
以下の比較表をもとに、それぞれの特徴を整理し、自分の計画や希望に合った方法を検討してみましょう。
つなぎ融資が適しているケース
つなぎ融資は、建物のプランが固まっていない段階でも資金を調達できる柔軟な仕組みです。以下のような状況では、つなぎ融資を活用するのが現実的といえます。
・建物のプランがまだ決まっていない
・土地だけ先に購入しておきたい
・希望する金融機関が分割融資に対応していない
・将来的にプランをじっくり練りたいが、良い土地が見つかったので先に押さえたい
とくに、建物より先に土地購入を優先したい場合や、検討中の銀行が分割融資に対応していない場合は、つなぎ融資の柔軟性が大きな助けになります。プランが未確定でも進めやすい点が魅力です。
分割融資が適しているケース
一方、建物計画がある程度確定しており、制度的なメリットを最大限に活かしたい場合は、分割融資が有効です。次のような状況に当てはまる方に向いています。
・建物のプランがほぼ固まっている
・住宅ローン控除や団信など、制度メリットを最大限享受したい
・金利負担を抑えたい
・借り入れを希望している金融機関が分割融資に対応している
金利や控除の恩恵を早期から得られるため、資金効率を重視したい方にとっては有利な選択肢となるでしょう。事前準備が整っている場合には、スムーズに手続きを進められる点もメリットです。
注文住宅を建てる際の資金プランは建築会社に相談しよう
つなぎ融資を使わずに注文住宅を建てるには、分割融資を活用した資金計画が前提となります。ただし、分割融資には「建物のプランが確定していること」や「希望の金融機関が対応していること」が必須です。
分割融資に対応している建築会社であれば、資金計画から金融機関の紹介、必要書類の準備まで一貫してサポートが受けられます。とくに初めて住宅を建てる方にとっては、こうしたサポート体制の有無は、建築会社選定の目安になるでしょう。
なお、分割融資が常に最適とは限らず、家づくりの進行状況や希望条件によっては、つなぎ融資が適しているケースもあります。どちらが自分に合っているのか判断がつかない場合や、資金面で不安を感じる場合は、早めに建築会社に相談し、一緒に最適な選択肢を検討していくことが大切です。
まとめ
注文住宅でつなぎ融資が必要かどうかは、建物の契約状況や利用する金融機関によって異なります。分割融資を活用できれば、金利や手続きの簡便さ、住宅ローン控除などの面で有利に進められ、つなぎ融資を使わずに家を建てることも可能です。
ただし、すべてのケースに分割融資が適しているとは限りません。まずは建築会社に相談し、自分に合った資金計画を立てることが重要です。
ポラスの「発見とちいえプラザ」では、つなぎ融資・分割融資の両方に対応しており、それぞれの事情に応じた提案が可能です。融資に不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
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