容積率とは?建ぺい率も考慮して理想の家を叶えよう

2025.6.24.

  • 注文住宅
土地購入を検討しているとき、「容積率」や「建ぺい率」という言葉を目にして戸惑った経験はありませんか?
 
これらは、その土地にどれだけの広さの建物が建てられるかを決める、家づくりの基本ルールです。しかし、表示されている数値の意味や、その活用方法を正しく理解している方は多くありません。
 
この記事では、容積率・建ぺい率の基礎知識から活用方法、計算例、緩和措置を利用した空間設計の工夫まで、理想の家づくりに役立つ情報を解説します。

まずは、「容積率」の定義と基本的な計算方法について確認しましょう。
容積率とは、敷地に対してどれだけの広さの建物を建てられるかを示す指標で、以下のように計算します。

容積率 = 延床面積(各階の床面積の合計) ÷ 敷地面積 × 100%

仮に容積率100%と定められているなら、100㎡の土地には延床面積100㎡までの建物を建てられるという意味になります。
容積率が高いほど、延床面積の上限が広がり、建てられる家のボリュームも大きくなります。とくに狭小地では容積率の上限が設計の自由度に大きく関わるため、非常に重要なチェックポイントといえるでしょう。

続いて、容積率と並んで重要な「建ぺい率」の基本について見ていきましょう。
建ぺい率とは、敷地面積に対してどれだけの建築面積(建物を真上から見たときの水平投影面積)で家を建ててよいかを示す割合を指し、以下の計算式で求めます。
 
建ぺい率 = 建築面積 ÷ 敷地面積 × 100%

たとえば建ぺい率50%の土地(100㎡)なら、建築面積の上限は50㎡です。上限を超えると建築許可が下りないため、設計時には容積率とあわせてこの制限も考慮する必要があります。

容積率と建ぺい率は、家づくりにおいてセットで確認すべき基本条件です。どちらも敷地ごとに定められており、両方を考慮して土地を購入しないと、あとで「思っていた家が建てられない」となりかねません。
たとえば、容積率が高いため「広い2階建てが建てられる」と思って土地を買ったものの、建ぺい率が低くて建築面積が制限され、結果として3階建てにしなければ希望の延床面積が確保できない、といった事態も考えられます。
理想の間取りをかなえるには、容積率と建ぺい率の両方を考慮した土地選びが重要です。

容積率や建ぺい率は、都市計画で定められた用途地域ごとに異なります。用途地域とは、住宅・商業・工業などのエリア区分のことで、住環境や利便性に応じてルールが設けられています。
 用途地域別の、建ぺい率と容積率は以下のとおりです。

用途地域 建ぺい率(%) 容積率(%)
第一種低層住居専用地域 30・40・50・60 50・60・80・100・150・200
第二種低層住居専用地域
田園住居地域
第一種中高層住居専用地域 100・150・200・300・400・500
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域 50・60・80
第二種住居地域
準住居地域
近隣商業地域 60・80
商業地域 80 200・300・400・500・600・700・800・900・1000・1100・1200・1300
準工業地域 50・60・80 100・150・200・300・400・500
工業地域 50・60 100・150・200・300・400
工業専用地域 30・40・50・60


建ぺい率と容積率の組合せは土地ごとに異なり、さらに同じ用途地域でも立地や接道状況によって設定が変わる場合があります。
こうした情報は各自治体の都市計画図や土地広告で確認でき、「建ぺい率60%、容積率200%」といった形で表示されているので、必ず確認しておきましょう。

ここからは、容積率と建ぺい率をもとに、どのくらいの規模の家が建てられるのかを考える方法を見ていきましょう。

検討している土地で建てられる家の大きさを考えるときには、まずワンフロアあたりの最大面積を把握することが有効です。これは建ぺい率をもとに導き出せます。
そこから、希望する延床面積に対して何階建てが必要になるか、容積率とのバランスを見ながら各階の床面積を配分していくと、全体像が具体的にイメージしやすくなるでしょう。

ここでは、敷地面積100㎡の土地を想定し、異なる建ぺい率・容積率の組合せでどのような建物が可能になるのかをシミュレーションしていきます。

まずは、建ぺい率50%・容積率100%の土地を例にとって考えてみましょう。
敷地面積が100㎡の場合、建ぺい率50%であればワンフロアの上限は50㎡となります。また、容積率100%から考えると、延床面積は最大100㎡まで許容されるため、50㎡の2階建て(1階50㎡+2階50㎡)が可能です。

※上記は計算上の最大値です。実際は高さ制限、日影規制、隣地との距離などにより、建築可能な大きさが変わることがあります。

延床100㎡は約30坪に相当し、3LDKや4LDKなどの一般的な4人家族向けの住宅として十分な広さです。

建ぺい率60%・容積率150%の敷地面積100㎡の土地なら、1階部分は最大60㎡まで建築可能です。容積率から、延床面積の上限は150㎡となるため、60㎡×2階+30㎡の3階建てや、50㎡×3階の構成も実現できます。

※上記は計算上の最大値です。実際は高さ制限、日影規制、隣地との距離などにより、建築可能な大きさが変わることがあります。

建ぺい率・容積率の数値が高い土地では、居住空間の広がりに加え、1階にガレージや店舗を設けるなど、設計の自由度が格段に上がります

建ぺい率や容積率は、その土地に建てられる家の上限を示す数字ですが、必ずしも最大限まで使い切る必要はありません。
たとえば、容積率ギリギリまで延床面積を確保すると建物のボリュームが大きくなり、採光や通風が制限されたり、庭や駐車スペースが狭くなったりすることもあります。また、建ぺい率に余裕をもたせると、庭や駐車スペースを確保しやすくなり、隣家との距離や採光・通風にも配慮した、ゆとりある外構計画が立てやすくなるでしょう。
敷地のポテンシャルを活かしつつ、自分たちの暮らし方に合った「ちょうどよい家」の大きさを見つけることが、満足度の高い住まいづくりにつながります。

ここからは、容積率に余裕がない土地でも、設計の工夫によって広がりのある空間を実現する方法を紹介します。延床面積に含まれない扱いとなる空間をうまく活用し、狭小地でも快適な住まいをつくるための参考にしてみてください。
※容積率緩和措置の詳細な運用基準は自治体によって異なる場合があります。検討に際しては、建築会社や設計士にご確認ください。

地下室は、容積率の上限に縛られた敷地でも居住スペースを増やせる有効な手段です。
具体的には、天井が地盤面から1m以下にあり、住宅用途として使用する地下室は、延床面積の3分の1まで容積率の対象外にできます。これは、設計によっては1フロア分に相当する広さを追加できることを意味します。
都市部や第一種低層住居専用地域など、容積率に厳しい制限があるエリアでは、地下室を活用することで地上階の面積を確保しつつ、快適な生活空間を実現する手法として有効です。

小屋裏収納やロフトも、条件を満たせば延床面積に算入されない空間として設計が可能です。
たとえば、ロフトは天井高が1.4m以下で、かつ直下階の床面積の2分の1以内である場合、容積率の対象外となります。限られた容積率の中でも、収納スペースを確保できるため、狭小地での住空間の有効活用に役立つ選択肢です。
なお、こうしたロフトはあくまで収納用途に限られ、寝室などの居住スペースとして使うことはできません。また、自治体によっては固定階段が認められず、取り外し可能なハシゴのみ許可されるケースもあります。ハシゴとなった場合には、不便を感じて使わなくなるケースもあるため、慎重に検討しましょう。

吹き抜けには床が存在しないため、延床面積には含まれません。たとえば2階建て住宅で1階部分に吹き抜けを設けた場合、1階は通常どおり容積率の計算対象となりますが、2階は吹き抜け分の面積を除いて算入されます。
ただし、吹抜け部分に渡り廊下などがあると、それらは「床面」として延床面積に含まれる扱いになります。こうした構造を検討する場合、容積率にどう影響するか、事前に建築会社に相談しておくと安心です。

屋根がなく外気に開放されたバルコニーは、先端から2m以内の部分については延床面積に含まれません。広めのバルコニーを設けると、アウトドアリビングとして活用でき、室内外がつながるような開放的な空間を演出するのに効果的です。
ただし、2m以上になった場合は超えた部分が延床面積に参入されます。また、屋根付きの構造とした場合は、屋根のある部分が延床面積として容積率の対象となるのが一般的です。

出窓は、延床面積にカウントされにくい構造として、室内に奥行きと明るさをもたらす有効なアイデアです。
床からの高さが30cm以上、外壁からの出幅が50cm未満、かつ開口部の過半が窓である場合、その出窓部分は容積率の対象外となります。面積に含まれないにもかかわらず、視覚的な広がりや採光効果を高められるのが魅力です。
ただし、出窓の下部に床までの収納などを設けると、床のある構造物と見なされて延床面積に含まれてしまいます。見た目の開放感と実際の使い勝手を両立させるには、構造の条件を理解したうえで設計者と相談することが大切です。

建物と一体化したビルトイン車庫は、延床面積の5分の1まで容積率の対象外とすることが可能です。たとえば、延床100㎡の住宅であれば、そのうち20㎡までの車庫部分を容積率の計算から除外できるため、住宅部分にゆとりを持たせながら駐車スペースを組み込むことができます。
なお、母屋とは別に建てられた独立型の車庫はこの緩和措置の対象外となるため、容積率を有効に使いつつ居住スペースも確保するには、ビルトイン形式で計画することが重要です。

ここでは、容積率や建ぺい率を意識して土地選びを進めるうえで、抑えておくべき注意点を紹介します

容積率は指定された数値がそのまま適用されるとは限らず、前面道路の幅によって制限を受ける場合があります。
都市計画法では、幅員12m未満の道路に接する敷地について、指定容積率と「道路幅員×法定乗率」のうち、低いほうを上限とすると定めています。

用途地域 法定乗率
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
4/10(40%)
その他 6/10(60%)

たとえば指定容積率が200%でも、前面の道路幅が狭い場合は実際に建てられる延床面積が制限されることがあります。
旗竿地(はたざおち=道路に面した細長い通路の奥に敷地がある土地)や幅の狭い通路に接する土地では、想定よりも小さな家しか建てられないことも。土地選びの際には、前面道路の幅と容積率の関係を確認しておくことが大切です。

敷地が複数の用途地域にまたがっている場合、それぞれに異なる建ぺい率や容積率が定められているため、全体を一律に計算することはできません。
こうしたケースでは、用途地域ごとに制限が異なるため、敷地面積に応じて按分して計算する必要があります。単純な平均では判断できないため、設計者による正確な確認が重要です。

容積率や建ぺい率の制限をクリアしていても、ほかの法規制によって希望通りの建物が建てられないケースもあります。具体的には、以下のような制限が考えられます。

制限の種類 内容
絶対高さ制限 景観や日照を守るため、地域ごとに建物の高さの上限を定める規制
北側斜線制限 敷地の北側に隣接する住宅の日照を確保するため、建物の高さや形を制限する規制
道路斜線制限 道路に面した建物が圧迫感を与えないよう、一定の角度で高さを制限する規制
隣地斜線制限 隣地への日照や通風を妨げないよう、敷地境界からの高さを制限する規制
日影規制 冬至を基準に、隣地に影を落とす時間や面積を制限し、日照権を保護する規制
高度地区 地域ごとに用途や建物の高さ・形態に細かいルールを定める都市計画上の指定区域

これらの制限や規制が敷地にかかっている場合、より厳しい制限が優先されます。そのため建ぺい率・容積率の範囲内であっても、希望の高さや広さの家が建てられないことも少なくありません。
土地を検討する際には、こうした周辺環境や法的制約も含めて、不動産会社や設計者に事前に確認しておくことが大切です。

家づくりを成功させるには、土地と建物を別々ではなく、セットで考えることが重要です。どれだけ立地が気に入っても、容積率や建ぺい率、用途地域、道路幅など、土地に定められた制限によっては、あとになって「希望していた大きさの家が建てられない」「理想の形状にできない」といった事態になりかねません。
こうした失敗を避けるには、土地選びの段階から「どんな家を建てたいか」という視点を持つことが大切です。土地購入から家づくりまでを一貫してサポートしてくれる会社に依頼すれば、制限を踏まえたプラン提案が受けられ、安心して計画を進められるのでおすすめです。

容積率や建ぺい率は、家の設計に直接影響する重要なルールです。土地選びの段階でこれらの制限を見落とすと、希望していた広さの家が建てられなかったり、理想の間取りが実現できなかったりといった事態に陥る可能性があるため注意が必要です。
こうした失敗を防ぐには、土地と家をセットで考えることが欠かせません。たとえば、ポラスの「発見とちいえプラザ」では、土地探しから建物の設計までを一貫してサポートしています。「建てたい家」が建つ土地を見つけるために、まずは気軽にご相談ください。

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ポラテックグループ
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