相続した土地を売るには何から始める?税金・名義変更・手順を完全解説

2026.5.8.

  • 不動産売却
親や身内が亡くなり土地を相続したとき、「何から手をつければいいかわからない」という方がほとんどです。相続土地の売却には知らないと損をする手順・税金・特例が数多くあり、準備不足のまま進めると数百万円単位で損をするケースも少なくありません。

この記事では、相続した土地の売却に必要な手順・税金・名義変更・節税特例を、相続発生から確定申告まで一本のガイドとして解説します。「3年以内の売却で使える特例」「共有名義のトラブル回避策」「生前贈与との比較」も網羅しているので、状況に合わせてご活用ください。

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相続した土地の売却は、通常の不動産売却と異なり「名義変更」「相続税の申告」「節税特例の期限」が複雑に絡み合います。まず全体の流れを把握することが、手続きの抜け漏れを防ぐ最大のポイントです。ここでは相続発生から確定申告まで4つのフェーズに分けて、やるべきことを順番に整理します。

相続した土地の売却は、大きく4つのフェーズに分かれます。「自分が今どの段階にいるか」を把握することが、手続き全体をスムーズに進める第一歩です。それぞれの目安期間と主なステップを以下の表で整理します。

相続発生直後の3か月は、後の手続き全体の土台を固める重要な期間です。この段階でやるべきことは、大きく「遺言書の確認」と「相続人・財産の調査」の2つです。

公正証書遺言は公証役場で、自筆証書遺言は法務局の遺言書保管制度で確認できます。遺言書がある場合は、内容に従って手続きを進めます。

戸籍謄本をもとに法定相続人を確定し、土地を含む財産全体を把握します。
またこの段階では、以下の判断や初動対応も必要です。
相続放棄の検討:農地・山林など維持コストが価値を上回る土地は、相続放棄という選択肢があります。期限は「相続を知った日から3か月以内」のため、早期の判断が必要です。
相続土地国庫帰属制度の確認:一定の要件を満たす土地を国に引き取ってもらえる制度です(2023年4月施行)。建物がある土地・境界が不明確な土地などは対象外になるケースがあるため、早めに法務局へご相談ください。
農地・山林など用途制限のある土地への注意:農地を相続したときは農業委員会への届出が、売却・貸付けする場合は原則として許可が必要です。一般の土地売却とは手続きが異なるため、早めに専門家へご相談ください。
測量・境界確定の相談:確定測量には通常3〜6か月を要するため、フェーズ1の初動で土地家屋調査士に相談することが理想的です。境界未確定のまま売却活動に入ると、取引が成立しないリスクがあります。

フェーズ2では、相続人全員で遺産の分け方を決め、土地の名義変更(相続登記)と相続税の申告・納付を完結させます。いずれも法定の期限があるため、早めに動き出すことが重要です。

相続人全員で遺産の分け方を決め、合意内容を遺産分割協議書にまとめます。土地を売却するつもりであれば、この段階で「換価分割(売却して現金を分配する方法)」を明記しておくことが、後日のトラブル防止につながります。

遺産分割協議書をもとに法務局へ相続登記を申請します。2024年4月から義務化されており、相続を知った日から3年以内に申請しないと過料の対象になります。詳細な手順・費用は「【2026年最新】相続した土地の名義変更(相続登記)の手順と費用」で解説します。

相続税の申告・納付期限は、相続開始から10か月以内です。相続税がかかるかどうかの判断基準は、「相続した土地にかかる税金の全体像」で解説します。
なお、納税資金が不足しそうな場合は、申告期限(10か月)以内に売却を完了させる必要があります。延納(分割払い)・物納(土地そのものを納税に充てる)という制度も存在するため、早期に税理士へ相談することをおすすめします。

相続登記が完了したら、いよいよ売却活動の開始です。このフェーズで最も意識すべきは「3年以内」という節税特例の期限です。期限を念頭に置きながら、仲介か買取かを選択し、計画的に進めることが重要になります。

不動産会社に査定を依頼し、売却活動を開始します。業者選びと仲介・買取の使い分けについては、「不動産会社の選び方と売却活動の進め方」で詳しく解説します。
なお、最終的な売却(代金受取・引き渡し)は登記完了後に限られますが、査定依頼・価格の把握は登記前から可能です。登記手続きと並行して査定を進めることが、時間短縮のコツといえます。査定をスムーズに進めるために、登記簿謄本・固定資産税評価証明書・遺産分割協議書などを事前に準備しておきましょう。

土地の売却が完了しても、手続きはまだ終わりではありません。売却翌年には確定申告が必要です。特例を利用する場合は利益がなくても申告が必須となる点に注意が必要です。申告を行わなければ特例は適用されません。確定申告の手順・必要書類・注意事項の詳細については、関連記事「土地売却にかかる税金、いくら?3000万円控除で損しない節税ガイド【売却価格別シミュレーション付き】」をご参照ください。

相続した土地を売却するには、まず名義変更(相続登記)を完了させることが前提条件です。2024年4月の義務化、2026年4月施行の住所変更登記義務化と、近年制度が大きく変わっています。手順・費用・新制度の内容を正確に把握して、手続きの遅れによるリスクを防ぎましょう。

相続登記とは、土地の所有権を「被相続人(故人)名義」から「相続人名義」に変える法的手続きです。相続登記が完了していない土地は、最終的な売買の決済(代金受取・引き渡し)ができません。名義変更が済んでいない状態で売却を進めようとすると、履行不能や履行遅滞による損害賠償リスクが生じる可能性もあります。
また2024年4月からは相続登記が義務化されており、放置すること自体にもペナルティが課されるようになりました。「売却する予定がないから後回し」という判断は、法的リスクの観点からも避けるべきといえます。売却を検討し始めた段階で、速やかに手続きを開始することをおすすめします。

近年、相続に関する登記手続きの義務化が相次いで施行されています。2つの制度の内容と違反時のペナルティを以下の表で整理します。

制度 施行 期限 違反時のペナルティ
相続登記の義務化 2024年4月〜 相続を知った日から3年以内 過料10万円以下
住所・氏名変更登記の義務化 2026年4月〜 変更から2年以内 過料5万円以下

2つの制度で注意が必要なのは、相続した土地を長期保有している間に引越しをした場合です。この場合、相続登記と住所変更登記の両方の手続きが必要になります。どちらか一方を忘れると過料の対象になる可能性があるため、引越しの際は忘れずに対応しましょう。
なお、2024年4月以前に発生した相続についても義務化の対象となります。まだ相続登記を済ませていない土地がある場合は、早めに手続きを進めることをおすすめします。

相続登記の手続きは、大きく4つのステップで進みます。各ステップで必要な書類を事前に把握しておくことで、手続きの遅れを防ぐことができます。

相続人・財産の確認:戸籍謄本をもとに法定相続人を確定し、固定資産税評価証明書などで対象となる土地の情報を把握します。

遺産分割協議書の作成:相続人全員の実印と印鑑証明書が必要です。全員の合意がなければ次のステップに進めないため、早めに協議を始めることが重要です。

法務局への登記申請:管轄の法務局への窓口申請のほか、オンライン申請も可能です。申請後、登記完了まで通常1〜2週間程度かかります。

登記完了・登記識別情報の受け取り:登記が完了すると、権利証の代わりとなる「登記識別情報」が発行されます。売却時に必要となるため、大切に保管しましょう。
※登記上の地目(畑・原野など)が現況(宅地)と異なる場合は、売却前に地目変更登記が別途必要になるケースがあります。土地の現況と登記内容に差異がある場合は、早めに確認しておくことをおすすめします。

相続登記にかかる費用は、主に「登録免許税」「司法書士報酬」「書類取得費」の3つで構成されます。費用の目安は以下の通りです。

費用の種類 目安
登録免許税 固定資産税評価額×0.4%
司法書士報酬 5〜10万円程度
書類取得費 数千〜数万円程度

相続人が1人・遺言書がある・財産の内容がシンプルな場合は、法務局の窓口相談を活用しながら自分で申請することも可能です。

相続人が複数・遺産分割協議が必要・書類が複雑な場合は、司法書士への依頼をおすすめします。特に相続人に未成年者がいる場合は特別代理人の選任、認知症の方がいる場合は成年後見人の選任が必要です。いずれも申請から選任まで数か月かかるケースがあるため、早期に司法書士・弁護士へ相談することが時間短縮の鍵となります。

「相続税を払ったのにまた税金がかかるのか?」という疑問をお持ちの方は少なくありません。相続時と売却時では課税される税金の種類がまったく異なります。ここでは各税金の種類と概要の把握に徹し、具体的な計算方法や節税手段は「【最重要】相続した土地の売却で使える2大節税特例と「3年10か月の壁」」で詳しく解説します。

相続税には基礎控除があり、財産の総額がこれを下回れば相続税はかかりません。まず自分が相続税の課税対象かどうかを確認することが、節税戦略を考えるうえでの重要な前提となります。

基礎控除額=3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
例えば相続人が3人(配偶者・子2人)の場合、基礎控除は4,800万円です。財産の合計額がこれを下回れば、相続税の申告・納付は不要となります。
ただし、「相続税がかからない=取得費加算の特例が使えない」ことも意味します。取得費加算の特例は相続税を実際に支払った方だけが利用できる制度のため、自分が相続税の課税対象かどうかは節税手段の選択に直結する重要な判断基準です。まずは財産総額と基礎控除額を比較して、課税対象かどうかを確認しておきましょう。
 

相続税と譲渡所得税は、まったく異なる2つの税金です。相続税は「財産を受け取ったとき」に財産全体に課税されるのに対し、譲渡所得税は「土地を売って利益が出たとき」に売却益に対して課税されます。課税のタイミングも対象もまったく異なるため、二重課税ではなく別々の税金として理解することが重要です。
「相続税を払ったのにさらに税金がかかるのは不公平では」と感じる方も多いですが、「取得費加算の特例」を活用することで、支払った相続税の一部を売却時のコストとして計上できます。二重課税感を実質的に緩和できる仕組みのため、相続税を支払った方は必ず適用可否を確認しましょう。

相続した土地の売却では、手続きの進行に応じて複数の税金が発生します。どのタイミングでどの税金がかかるかを事前に把握しておくことで、資金計画を立てやすくなります。売却プロセス別に税金の種類を以下の表で整理します。

タイミング 税金の種類 概要
相続登記時 登録免許税 固定資産税評価額×0.4%
売買契約時 印紙税 売却価格に応じた定額
売却後の翌年 譲渡所得税(所得税+住民税+復興特別所得税) 売却益に課税

この中で金額が最も大きくなりやすいのが、売却後の翌年に申告する譲渡所得税です。節税特例を適用できるかどうかによって税負担が大きく変わるため、売却活動を始める前に適用可否を確認しておくことが重要です。

譲渡所得税の税率は、所有期間によって短期(5年以下:39.63%)・長期(5年超:20.315%)に区分されます。相続した土地は「被相続人が取得した日」から所有期間を計算するため、多くのケースで長期譲渡所得に該当し税率面で有利です。なお取得費が不明な場合は概算取得費(売却価格の5%)が適用され、課税譲渡所得が膨らみやすくなるため、取得費を証明できる書類を探しておくことをおすすめします。税率の詳しい計算方法・シミュレーションは関連記事「土地売却にかかる税金、いくら?3000万円控除で損しない節税ガイド【売却価格別シミュレーション付き】」をご参照ください。

相続した土地の売却で使える節税特例は、大きく「空き家特例」と「取得費加算の特例」の2つです。どちらも「3年以内」という期限が設けられており、この期限を逃すと控除の機会が永久に失われます。 売却活動には時間がかかるため、期限から逆算して早めに動き出すことが重要です。

空き家特例とは、相続した空き家とその土地、または解体後の土地を売却した際に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。ただしマンション等の区分所有建物は対象外となります。適用条件を満たせば税負担を大幅に圧縮できる強力な特例ですが、いくつかの要件を満たす必要があります。

・相続開始直前において被相続人が単独で居住していた建物であること(同居人がいた場合は原則不可。要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していた場合は一定の要件を満たせば対象。詳細は税理士へご確認ください。)
・1981年5月31日以前に建築された旧耐震基準の建物であること
・相続から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
・売却価格が1億円以下であること(共有名義の場合も持分ではなく物件全体の売却価格で判定)

改正前は売主が事前に耐震リフォームまたは建物解体(更地化)を行う必要がありましたが、改正後は以下の2つの方法から選択できるようになりました。

方法 内容
従来の方法 売主が事前に①耐震リフォームまたは②建物解体を行い、工事完了後に売却する
改正で追加された方法 現状のまま売却し、買主が売却翌年の2月15日までに①耐震リフォームまたは②解体を完了する方法(※下記参照)
※この方法(改正で追加された現状渡し売却)の適用を受けるためには、買主が売却翌年の2月15日までに耐震リフォームまたは解体工事を完了させることが条件です。さらに売主は、その内容について市区町村の証明書等を取得し、売却翌年の3月15日までの確定申告で添付する必要があります。

改正後は売主が事前コストを負担せずに現状渡しで売却できるケースが生まれ、使いやすくなりました。ただし旧耐震基準(1981年5月31日以前建築)という建物条件は、どちらの方法でも共通して必要です。
また相続人が3人以上の場合、1人あたりの控除上限が2,000万円に変更されています(2人以下の場合は従来どおり3,000万円)。適用を検討する場合は確定申告が必須です。

取得費加算の特例とは、相続税を支払った相続人が土地を売却する際に、支払った相続税の一部を取得費に加算できる制度です。課税譲渡所得を圧縮することで、売却時の税負担を軽減できます。

・相続開始から約3年10か月以内(相続税申告期限の翌日から3年を経過する日まで)に売却すること
・相続税を実際に支払っていること(相続税がかからなかった方は利用できません)

加算できる取得費 = 相続税額 ×(売却した土地の相続税評価額 ÷ 相続財産の合計額)
※上記は概算イメージです。実際の計算では分母の構成が異なる場合があるため、正確な金額は税理士にご確認ください。

被相続人が購入した際の書類が紛失しており取得費が不明な場合、売却価格の5%しか取得費として計上できません。概算取得費5%しか認められない状況ほど課税譲渡所得が膨らむため、取得費加算の特例で相続税分を差し引くことによる節税インパクトが大きくなります。取得費が不明な方こそ、この特例の適用可否を必ず確認しておきましょう。適用を検討する場合は確定申告が必須です。

空き家特例・取得費加算の特例には、それぞれ異なる期限が設けられています。どちらの特例も、1日でも期限を過ぎると控除の機会が永久に失われます。期限の構造を正確に把握したうえで、逆算したスケジュール管理が不可欠です。

確認すべき期限 タイミング
相続税の申告・納付期限 相続開始から10か月以内
空き家特例の売却期限 相続から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
取得費加算の特例の売却期限 相続開始から約3年10か月以内(相続税申告期限の翌日から3年を経過する日まで)

売却活動には一般的に3〜6か月以上かかるケースも多く、期限ギリギリに動き出すと間に合わないリスクがあります。相続発生から半年以内に売り出しを開始することが理想的なスケジュールといえます。「まだ時間がある」と感じている段階から、不動産会社・税理士への相談を始めることをおすすめします。
なお売却活動には一般的に3〜6か月以上かかるケースも多く、以下の判断基準を参考に仲介・買取の切り替えを検討しましょう。

残り期間の目安 推奨する対応
期限まで1年以上ある 仲介で適正価格を目指す(時間的余裕あり)
期限まで半年を切った 仲介と並行して買取の見積もりも取得し、比較して決断する
期限まで3か月を切った 買取への切り替えを本格的に検討する(期限内完了が確実になる)

ただし以下のような状況では、準備を整えてから売却する方が結果的に有利になることもあります。遺産分割協議がまだ整っていない・共有者の一人が売却に反対している・相続人に認知症の方がいて後見制度の手続き中・測量・境界確定の手続きが進行中などのケースでは、無理に急がず不動産会社・税理士と相談しながら最善策を選びましょう。なお3年経過後に使える手段については「相続した土地の売却でよくある質問(FAQ)」をご覧ください。

2大特例以外にも、状況によっては以下の特例が適用できる可能性があります。自分の土地の状況や売却価格に照らし合わせて、該当するものがないか確認しておきましょう。

特例名 控除額 主な条件
低未利用土地等の特別控除 譲渡所得から100万円控除 都市計画区域内・売却価格500万円(市街化区域等は800万円)以下など。適用期限あり・税理士に要確認
公共事業等のための売却 5,000万円 道路拡張・区画整理等の収用

これらの特例は適用条件が細かく定められており、すべての方が利用できるわけではありません。特に低未利用土地等の特別控除は、売却価格が比較的低い土地を手放す際に活用できるケースがあります。2大特例の適用が難しい場合でも、諦めずに税理士へ相談することで節税の可能性が見つかることがあります。

相続をきっかけに土地が共有名義になるケースは非常に多く、「とりあえず均等に分けた」という選択が後に深刻なトラブルを招くことがあります。共有名義のリスクを正しく理解したうえで、早めに解消策を検討することが重要です。ここでは共有名義になりやすい理由・解消スキームの3つ・よくあるトラブルへの対処法を解説します。

相続人が複数いる場合、遺産分割協議で「とりあえず均等に」という結論になりやすく、共有名義が生じやすい構造になっています。放置すると多くのリスクが生じます。
共有名義の主なリスクは以下の通りです。
権利関係の複雑化:次の相続が発生するたびに共有者が増え、数十年後には数十人規模の共有状態(いわゆる「争族」)になるケースがあります。
固定資産税の連帯納税義務:固定資産税は共有者全員が納税義務を負います。共有者間で費用負担の合意が取れないと、トラブルに発展しやすくなります。
特定空き家指定による税負担増:建物が管理不全になると「特定空き家」に指定され、固定資産税の住宅用地特例(6分の1軽減)が解除されて税負担が激増するリスクがあります。
相続登記義務化による法的リスクの増大:2024年からの相続登記義務化により、共有名義の放置には過料のリスクも加わりました。
これらのリスクを避けるためにも、共有名義は早期に解消することが重要です。

共有名義を解消する方法は、大きく3つのスキームに分かれます。それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、共有者間の状況に合った方法を選択することが重要です。

スキーム 概要 メリット デメリット
換価分割 全員で売却し現金を分配 市場価格で売れる・関係が清算される 全員の合意が必要
代償分割 一人が土地を取得し、他の相続人に現金を支払う 土地を手放さずに済む 支払う側に現金が必要
共有持分売却 自分の権利のみを第三者に売却 他者の同意不要で換金できる 市場価格より大幅に低い価格になる
 

3つの中で最も一般的なのが換価分割です。全員で売却して現金を分配するため関係をすっきり清算できますが、全員の合意が前提となります。換価分割を選択する場合は、遺産分割協議書に「売却後の精算条項(仲介手数料等控除後の分配ルール)」を詳細に記載しておくことが、後日の紛争防止の鍵となります。
共有持分売却は他の共有者の同意なく進められる一方、買い手が限られるため市場価格より大幅に低い価格になることがほとんどです。他の方法で解決できない場合の最終手段と考えておくとよいでしょう。

共有名義の土地では、売却を進める過程でさまざまなトラブルが発生することがあります。代表的なケースと対処法を以下に整理します。

まずは話し合いによる解決を目指します。それでもまとまらない場合は、裁判所に「共有物分割請求訴訟」を申し立てることで、裁判所が売却・分割を命じる判決を下すケースがあります。時間と費用がかかるため、早期の話し合いで解決することが最善です。

家庭裁判所への「不在者財産管理人」選任申請が必要です。選任までに数か月かかるケースもあるため、所在不明の共有者がいる場合は早めに弁護士・司法書士へ相談することをおすすめします。

認知症の方は法律上、有効な意思表示ができないため、成年後見人を選任しなければ売却手続きを進めることができません。いわゆる「資産凍結」状態に陥る前に、早期に専門家へ相談することが重要です。
いずれのケースも、問題が複雑化する前に早めに動き出すことが解決への近道となります。

「生前に贈与してから売るべきか、相続まで待つべきか」は、老後の資産整理を考える世代にとってリアルな悩みです。税コストだけでなく、登記費用・不動産取得税・使える節税特例の有無まで含めて比較すると、多くの場合で結論が見えてきます。ここでは両者の違いを多角的に整理し、判断の参考となる情報をお伝えします。

生前贈与と相続では、名義変更コスト・税率・使える特例がすべて異なります。どちらが有利かを判断するには、税金だけでなくトータルのコストで比較することが重要です。

比較項目 生前贈与してから売る 相続してから売る
贈与税・相続税 贈与税が発生(受け取った年に課税) 基礎控除内なら相続税がかからない場合あり
所有期間 贈与者の取得時期を引き継ぐ 被相続人から引き継ぐ(長期譲渡20.315%になりやすい)
空き家特例・取得費加算 使えない 使える可能性あり
登録免許税 2.0%(相続の5倍) 0.4%
不動産取得税 課税 非課税
相続前贈与の加算期間 2024年改正により段階的に7年へ延長(相続開始日により経過措置あり)。駆け込み贈与による節税は困難になりつつある

表からわかる通り、土地売却を目的とする場合、生前贈与は登録免許税・不動産取得税のコストが高く、節税特例も使えないため、多くのケースで不利になります。2024年の税制改正により相続前贈与の加算期間が段階的に7年へ延長されることで、駆け込み贈与による節税効果も得にくくなっています。

土地売却を目的とする場合、多くのケースでは相続まで待って3年10か月以内に売却するのが税コスト最小化の王道です。ただし以下のような状況では、生前贈与が合理的な選択肢になることもあります。
相続財産が基礎控除を大きく超える場合:相続税の負担が重くなることが見込まれるケースでは、生前贈与によって相続財産を減らす戦略が有効になることがあります。
相続時精算課税制度を戦略的に活用する場合:贈与時に2,500万円まで贈与税負担を抑えつつ、最終的には相続時に精算される制度です。完全な非課税ではありませんが、贈与後に財産価値が上昇するケースなど、一定の条件下では相続税負担の軽減につながる場合もあります。
受贈者がすぐに売却しない場合:贈与後に長期間保有してから売却する場合は、贈与税のコストを上回るメリットが生まれることもあります。
どちらが有利かは財産全体の状況・相続人の数・売却タイミングによって大きく異なります。生前贈与と相続のどちらを選ぶべきか迷う場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。

節税特例の効果は、実際の数字で確認することで初めて実感できます。ここでは代表的な3つのケースをもとに、特例あり・なしの税額を比較します。「自分の場合はいくらになるか」を把握する参考としてご活用ください。

取得費不明(概算取得費5%を使用)、所有期間は被相続人から引き継ぎ10年(長期譲渡)

条件 課税譲渡所得 税額
空き家特例なし 1,900万円 約386万円
空き家特例(3,000万円控除)適用後 0円 0円

取得費が不明なケースでは概算取得費5%しか経費計上できないため、課税譲渡所得が膨らみやすくなります。空き家特例を適用することで、税負担をゼロにできるケースもあります。適用条件を満たしているかどうか、早めに確認しておきましょう。

相続税200万円支払い済み、取得費1,500万円が判明、所有期間15年(長期譲渡)

条件 課税譲渡所得 税額
取得費加算の特例なし 1,350万円 約274万円
取得費加算の特例あり(相続税200万円のうち100万円が加算できる想定) 1,250万円 約254万円

取得費加算の特例による節税インパクトは、相続税の規模・財産構成によって大きく変動します。相続税を多く支払っているケースや取得費が不明なケースほど、節税効果が大きくなります。

各自の持分1/3ずつ、取得費が判明、所有期間10年(長期譲渡)

項目 各自の金額
売却額(持分1/3) 1,000万円
取得費(持分1/3) 持分に応じて按分
譲渡所得税(長期20.315%) 持分に応じて計算

共有のまま放置してから売却するケースでは、その間の固定資産税・維持管理費が継続してかかります。早期に換価分割を決定して売却することで、管理コスト分だけ手取り額が増える結果につながります。共有名義の解消と売却のタイミングは、できる限り早めに検討することをおすすめします。

相続した土地の売却に関して、特に多く寄せられる疑問をQ&A形式でまとめます。「自分のケースはどうなるのか」という疑問の解消にお役立てください。

査定・価格の把握は登記完了前から可能です。ただし売買契約・引き渡しは相続登記完了後に限られます。登記完了まで3〜6か月かかるケースもあるため、査定はなるべく早めに依頼することをおすすめします。登記手続きと査定を並行して進めることが、時間短縮の最善策です。

協議が未完了のまま売却を進めることは原則できません。ただし「換価分割(売却を前提とした分割方法)」を協議の中で確定させることで、合意形成と並行して準備を進めることは可能です。査定依頼や不動産会社との相談は、協議と並行して始めておくとよいでしょう。

「取得費加算の特例」は相続税の還付制度ではなく、売却時の譲渡所得税を減らす制度です。支払った相続税が直接戻るわけではない点にご注意ください。あくまで売却時の税負担を軽減する仕組みとして活用するものです。

2大特例(空き家特例・取得費加算の特例)は使えなくなりますが、以下の手段が残っている可能性があります。
・低未利用土地等の特別控除(譲渡所得から100万円控除・売却価格500万円以下など条件あり。適用期限があるため税理士に要確認)
・取得費が判明している場合は正確な取得費計上による課税所得の圧縮
・市街地価格指数による取得費の推計(税務署に否認されるリスクを伴うため、必ず税理士と協力して実施。必ず認められるわけではない点に注意)
期限を過ぎた場合でも、諦めずにまず専門家へ相談することをおすすめします。

相続した土地の売却は、通常の売却と異なり「名義変更」「税金」「節税特例の期限」が複雑に絡み合います。知らないまま進めると、数百万円単位で損をするケースも少なくありません。特に節税特例は1日でも期限を過ぎると永久に使えなくなるため、「まだ時間がある」と感じている段階から動き出すことが重要です。名義変更・税務・売却活動は並行して準備を進めることができるため、「何から始めればいいかわからない」という方こそ、早めに動き出した分だけ、選べる手段が増えます。

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