注文住宅における坪単価とは?建築会社を比較するポイント・注意点を詳しく解説

2024.6.7.

  • 注文住宅
注文住宅の価格を表す指標のひとつとして「坪単価」がよく使われます。しかし、坪単価とは一体どのような指標なのか、具体的に理解していない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、坪単価の基本的な考え方から、坪単価を参考に建築会社を比較する際のポイントや注意点まで詳しく解説します。注文住宅の坪単価の相場や、土地探しから始める場合の予算の立て方のコツもお伝えしますので、注文住宅を検討中の方は、ぜひご参考にしてみてください。
 

まずは、そもそも坪単価とはどのような指標なのかを解説します。

坪単価とは、建物の延床面積1坪(約3.3㎡)あたりにつきかかる建築費を表す指標を指します。坪単価は、以下の計算式で算出するのが一般的です。
坪単価=家の本体価格÷延床面積
例えば注文住宅の本体価格が2,450万円で、延床面積が35坪の場合、坪単価は2,450万円÷35坪で70万円となります。

本体価格とはその名のとおり、注文住宅の建物本体の価格を指します。本体価格には、次のようなものが含まれているのが一般的です。
 
・基礎や本体工事費
内・外装費
建具費
標準的な水回り設備

ここで注意すべきなのは、建物本体に何を含むのかは明確に決まっておらず、建築会社によって異なることです。建築会社によっては、照明器具やエアコンなどの設備費を含むこともあります。本体価格が具体的に何を含んだものなのかは、建築会社に直接確認するとよいでしょう。
 

延床面積とは、各階の床面積の合計を指します。例えば1階の床面積が20坪、2階が10坪だった場合、延床面積は30坪として坪単価を計算します。
なお建築会社によっては、坪単価を出すときに、延床面積ではなく施工面積を用いるケースも少なくありません。施工面積とは、バルコニーやロフト、インナーガレージなど、床面積に含まない箇所も含んだ面積のことです。
延床面積と施工面積のどちらを使って計算するかによって、坪単価は大きく違ってくる点に注意しましょう。例えば延床面積が30坪、バルコニーやロフトなどを含んだ施工面積が5坪だった場合、まったく同じ3,000万円の注文住宅でも坪単価は次のように異なります。
延床面積で計算するA社の坪単価 3,000万円÷30坪=100万円
施工面積で計算するB社の坪単価 3,000万円÷(30坪+5坪)=約85.7万円
建築会社が提示している坪単価が、延床面積と施工面積のどちらで算出されているのかも、あわせて確認しておくことをおすすめします。

注文住宅の坪単価は、建物価格と延床面積に基づいて算出されます。そのうち建物価格は、さらに複数の要素によって価格の高低が左右されます。
ここでは注文住宅の坪単価を左右する要素を、具体的に紹介します。

注文住宅の坪単価は、住宅の構造によっても違います。
民間住宅の構造は、主に木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート(RC)造の3種類があります。このうちもっとも坪単価が安いのは木造です。これは単純に、木造住宅の主構造材である木材が、鉄骨や鉄筋、コンクリートと比較すると単価が安いこと、また木造住宅はほかの構造と比べると軽いため、地盤改良や基礎にかかるコストを抑えやすいことなどが理由です。
3種類のなかでもっとも坪単価が高くなるのは、鉄筋コンクリート造です。鉄筋コンクリー造は、原料となるコンクリートの価格が高いことに加え、工場でプレカットできる木造や鉄骨造と異なり柱や梁(はり)などの構造部分を現場でつくる必要があります。また、型枠に流し込んだコンクリートが固まるまで待つことも必要です。結果的に工期も長くなる傾向があり、職人の人件費が高くなってしまうことも理由として挙げられます。

注文住宅を建築するのが、大手ハウスメーカーか地域密着型ビルダー(工務店)かは、坪単価に影響を与える要素の一つです。
大手ハウスメーカーとは、全国に支社や支店を持ち住宅建築に対応している、対応エリアが広い会社を指します。対して地域密着型ビルダーとは、一定のエリア内で、地域に密着して営業している建築会社を指します。
一般的に、大手ハウスメーカーは、地域密着型ビルダーよりも坪単価が高くなる傾向があります。それは、大規模に事業展開するための人件費や運営費、全国的に宣伝するための広告費が多くかかり、そのコストを建築費に反映させる必要があるためです。
とはいえ、大手ハウスメーカーのなかには、自社で大量に建材を生産するなどしてローコストに抑えているところもあります。反対に、地域密着型ビルダーであっても、工法にこだわったり高級路線を事業戦略としている会社も少なくありません。
そのため必ずしもハウスメーカーのほうが、地域密着型ビルダーよりも高いと限らない点は理解しておきましょう。

建物のデザインや間取りも、坪単価に影響を与える要素です。
建物のデザインについては、凹凸が多く複雑なデザインになるほど使用する建材の量が増え、また施工の手間も増えます。間取りについても、部屋を細かく区切るほど壁量が増え、同じく建材の量や施工の手間が増大します。
そのため外観デザインや間取りが複雑であるほど、坪単価は高くなる傾向があるのです。

建物価格には使用する設備や建材の費用も含まれるため、注文住宅にどのメーカーの、どんなグレードの設備を導入するかや、どのような建材を使用するのかによっても坪単価は変わります。
例えば 同じ外壁の仕上げでも、サイディングを使用するのと塗り壁にするのとでは、塗り壁にするほうが単価が高くなります。塗り壁は職人がコテを使って手作業で仕上げるため、より多くの人件費がかかるためです。
またキッチンやユニットバスなどの設備についても、多くのメーカーが同じブランド内でも3段階程度にグレードを分けています。より高機能なハイグレードのタイプを選べば、それだけ坪単価は高くなってしまいます。

注文住宅の坪単価は、ウクライナ情勢や人件費の高騰などさまざまな要因で、近年上昇しています。ここでは首都圏における2022年の坪単価の相場を、建物の構造別にご紹介します。

住宅の構造 平均坪単価(首都圏) 平均坪単価(全国)
木造 約75万円 約75万円
鉄骨造 約105万円 約107万円
鉄筋コンクリート(RC)造 約131万円 約124万円

出典:「2023年度 住宅着工統計」(国土交通省)を加工して作成

住宅の坪単価は、工法によっても大きく異なることがわかります。一方、首都圏の坪単価と全国の坪単価に大きな乖離はありません。

 

ここからは、注文住宅の坪単価を抑えるコツを紹介します。

建物は、デザインをできるだけシンプルにすれば、それだけ材料費や人件費を減らせるため坪単価を抑えられます。
例えば2階建てにする場合、1階と2階の床面積がほぼ同じの総二階にすると、建物の外観が正方形や長方形などシンプルな形状になります。また家の中についても、壁面をくぼませるニッチを設けたり、天井のデザインを折り上げ天井にしたりすると、デザイン性はよくなるものの坪単価も高くなるので避けるのが無難です。
間取りについても、廊下が少なくなる設計にするなどし、できるだけ壁量を減らすことを心掛けるとよいでしょう。

設備についても、導入を検討しているものが本当に必要なのかを考えましょう。例えばビルトイン食洗機は、新築時に導入したものの、「家族の人数が少ない」「予洗いが面倒」などの理由で使わなくなる人が多い設備のひとつです。
また収納は多いほうがいいと考え、あちこちに収納を造作してもらったけれども、高い位置にあったり深すぎたりする収納は使いづらくて使っていないという声もよく聞きます。
注文住宅を建てるときには、つい「せっかくだから」と欲張って設備を導入しがちです。しかし坪単価を抑え住宅コストを下げたいのであれば、自分たちのこれまでの暮らし方なども考慮して、その設備や機能が本当に必要なものかをよく考えるようにしてください。

窓は家の中に光や風を取り入れたり、景色を楽しんだりするのに欠かせない設備です。しかし大きくなるほど価格が高く、また数が増えればそれだけ設置費用もかさんでしまいます。そのため窓の数や大きさを見直し必要最低限に抑えると、坪単価を下げるのには効果的です。
例えば西日の当たる部屋や、北向きの部屋であれば、窓は小さいほうが断熱的にも有利です。窓の数や大きさは、窓を設置する場所や目的などにあわせてよく検討するとよいでしょう。

ここまで解説したとおり、本体価格に何を含むか、延床面積と施工面積のどちらで計算するのかなどにより、坪単価は大きく違ってきます。そのため単純に坪単価の数字だけを比較して、家の価値を判断するのは早計です。
ここでは坪単価を参考に、建築会社を比較するときのポイントや注意点を解説します。

「坪単価の基本|計算方法や含まれるものを知ろう」で解説したとおり、建築会社によって本体価格に含むものや延床面積と施工面積のどちらで計算するのかは異なります。
そのため坪単価70万円のA社と坪単価80万円のB社が同じ家を建てたとしても、A社の方がトータルコストが安くなるとは限らない点はよく理解しておく必要があるでしょう。

坪単価のもととなる本体価格は、各社が想定している標準仕様の設備や建材の種類・メーカー、グレードなどに基づいて算出されています。
基本的には、価格の安い設備や建材を使えば坪単価は低くなります。そのため坪単価が低い建築会社の標準仕様が気に入らず、設備や建材のグレードを上げたいと考えるケースは少なくありません。しかしそうするとオプション料金がかさみ、結果的にはもともと坪単価が高い会社よりも最終建築費用が高くなる可能性があります。
とはいえなかには、坪単価が安いのに、大量仕入れするなどの企業努力でハイグレードな設備を使っている建築会社も少なくありません。坪単価をもとに建築会社を比較するときには、具体的にどのような仕様となっているのか確認することが重要です。

建築会社によって、標準としている耐震等級や断熱等級などの住宅性能も異なります。そのため坪単価をもとに建築会社を比較するときには、住宅性能の違いも確認することをおすすめします。
例えば坪単価70万円で耐震等級1が標準仕様のA社と、坪単価75万円で耐震等級3を標準仕様としているB社があったとします。その場合、耐震性を重視したい場合には、多少坪単価が高くてもB社を選んだほうが、満足度が高くなるかもしれません。
とくに断熱性能含む省エネ性能は、入居後の光熱費や住宅ローン控除の額にも影響します。坪単価が低い・高いだけに惑わされず、トータルで考えることが大切です。

注文住宅を建てるためにかかる費用は、本体価格だけではありません。ほかにも付帯工事費や諸費用が必要になることも念頭に、住宅予算は総額で考える必要があります。

付帯工事費 地盤改良費、塀や門扉などの外構費、水道の引き込み工事費など
諸費用 印紙税や住宅ローンの借り入れにかかる費用、不動産登記費用、仲介手数料など


具体的には、付帯工事費は本体価格の20%、諸費用は本体価格の10%を見込んでおくのが無難です。注文住宅の予算を3,000万円とする場合、本体価格は2,300万円程度で考えておくと、予算内におさめやすくなるでしょう。

ただし付帯工事費や諸費用に何を含むかも、建築会社によって異なります。検討している建築会社に確認するようにしてください。

 

注文住宅は高額な買い物であるため、つい「少しでも安く」と坪単価に注目してしまいがちです。しかし、理想の家を実現するには、坪単価だけで建築会社を選ぶのはおすすめできません。ここでは、建築会社を比較して選ぶときに、チェックしたいポイントを3つ紹介します。

住宅デザインにはシンプルモダン、ナチュラルモダン、南欧風など多くの種類があり、建築会社はそれぞれデザインの得意分野があります。そのため建築会社は、自分たちの好みのデザインを実現できる会社を選ぶことが大切です。
いくら坪単価が安くても、自分たちが希望するデザインの住宅の建築経験が乏しければ、よいアドバイスは期待できません。また、対応する建築資材を販売しているメーカーと普段取り引きしていない場合には、材料費も高くなる可能性があるでしょう。
建築会社がどのようなデザインを得意としているかは、ホームページを確認するだけでなく、実際に建てた家やモデルルームに足を運んでみたりして、自分の目で確かめることをおすすめします。

注文住宅は、人柄がよく提案力のある営業担当者がいると、家づくりをスムーズに進めやすくなります。
人柄については、まるで自分の家を建ててくれるかのように親身に対応してくれる人であれば安心です。また、問い合わせに対して迅速に回答してくれるようだと、ストレスを感じにくくなります。
また提案力については、こちらから出した要望をそのまま実現するだけでなく、より良いアイデアを出してくれるような担当者だとより理想的な家づくりができるでしょう。

注文住宅は高額な買いものであり、また数十年にわたって住むことになるため、アフターサービスの充実度も重要なチェックポイントです。アフターサービスが手薄だと、点検や修理が必要になったときに高額な費用がかかる可能性があるためです。
なお、新築住宅については、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)にもとづいて、10年間の瑕疵(かし)担保責任が義務づけられています。そのためアフターサービスを比較するときには、法で定められた10年間の保証に加え、どのような保証があるのかを比較するとよいでしょう。

土地を購入するところから注文住宅を検討する場合、土地と建物の予算配分を考えながら進めないと失敗する可能性があります。
例えば注文住宅の広さやグレードにこだわりすぎると建物予算が膨らんで、希望のエリアで土地を購入できなくなるかもしれません。反対に土地購入を優先してしまうと、土地の形状にあわせて家づくりを考えないといけなくなります。
そのため土地購入からの注文住宅建設は、土地購入と建物の設計をワンストップでおこなえる会社に依頼するのが理想的です。土地と建物の費用バランスなどを考えて進めてもらえれば、希望の立地に理想の家を建てられる可能性が高くなるでしょう。
土地探しからの注文住宅建築について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
土地探しのコツとポイントをプロが解説「注文住宅は土地から始める」

坪単価には明確な基準がないため、あくまでも家づくりの初期段階で、おおよその目安とする程度にとどめましょう。また坪単価を参考に建築会社を比較するときには、含まれているものや設備・建材のグレード、標準の住宅性能なども調べることが重要です。
なお土地探しからはじめる場合は、土地代も含めた総予算で家づくりを考えると、後悔を防ぎやすくなります。
例えばポラスの「発見とちいえプラザ」では、一人の担当者が土地探しから建物の設計までを受け持って、理想の家づくりをサポートしています。費用面で不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

SUPERVISOR

監修者

柳瀬 栄

柳瀬 栄 (やなせ さかえ)

宅地建物取引士 業界歴約30年の実績と 自身の不動産購入経験から 分かりやすい解説と定評がある。

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